山岳遭難の統計調査。遭難増加でも登山者は減少。なぜ!?

山岳遭難の統計調査。遭難増加でも登山者は減少。なぜ!?

遭難

山に行くと遭難の危険が常につきまといます。自分は遭難しないと思って山に登った人が毎年たくさん遭難しているわけですから、遭難はするんです。

遭難を予防する手立ては色々と考えられますが、一つは過去実績を知ることです。過去にどこでどれだけの遭難事故が発生していたのかを知ることで、そこが注意すべき場所として予習することができます。

過去の遭難者数(2007年~2016年)

まずは過去の遭難者数を確認してみましょう。登山白書2017より、2007年~2016年の遭難者数を棒グラフにすると以下のとおりでした。ここ10年右肩上がりに遭難者は増えており、近年は1年で約3000人が遭難しています。死亡事故はそのうちの1割程度ですが、死亡事故に比例して微増傾向です。

遭難者数が年々増加傾向にあるのはなぜでしょうか?「それは年々登山人口が増えているからでしょ?」と思った方。ハズレです。折れ線グラフはレジャー白書より、2007年~2016年の登山人口を示したものですが、近年はむしろ右肩下がりで遭難者数との相関はありません。

つまり、登山人口は減っているのに遭難者は増えたということです。

2007年~2016年の登山人口
遭難者数

なぜなのでしょうか?その理由を探るべく、今度は年代別の遭難者数を見てみましょう。70代の遭難者数が急激に伸びていることがわかります。これに続き40代、50代も微増、60代も2015年をピークに減少傾向ですが、2013年に比べると増えています。

年代別の遭難者数
年代別遭難者数

以上より、70代以上を中心とした高齢者の遭難の増加が登山者総数は減っても遭難者数が増加している原因と言えそうです。

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なぜ高齢者の遭難が増加したのか?

高齢者の遭難が増加した原因としてまず思いつくのが、体力の衰えです。気持ちだけは若かりし頃のままで山に挑むものの、体力が伴わずに遭難に至るというもの。確かにそれが原因で遭難することはありますが、気持ちだけ若いのは今も昔も同じような気がします。

高齢者遭難の増加の原因は、登山というものが年々身近なものになってきたからではないでしょうか。登山と言えば昔は山岳会に所属し、先輩から体力はもちろんのこと登山技術のいろはを叩き込まれて厳しい世界という印象でしたが、昨今ではファッションで登山するような雰囲気すらあります。

山の日が制定されたことで、登山は一部のムサイ男だけのものではなく完全に国民のものになりました。登山が身近になったと言えば聞こえは良いですが、一般化するということは登山者のレベルが低下したと同義です。

それはおそらく全世代に言えることだと思いますが、若年者はまだ体力でカバーできるものの、高齢者は体が付いていかず遭難につながっているものと思われます。

遭難の内訳

ではどのような遭難が多いのでしょうか。2016年の山岳遭難統計によると、以下の通り。最も多いのが道迷いでした。

  • 道迷い  :38.1 %
  • 転落・滑落:20.7 %
  • 転倒   :16.1 %
  • 病気・疲労:14.8 %

道に迷うかどうかは体力というよりも知識や判断力によるところが大きいような気がします。どちらかというと、高齢者よりも経験の浅い若年者の方が道迷いの危険性は高いように思います。

が、実際は疲労による判断力の低下から誘発される道迷いであったり、道に迷っても自力で下山できるための体力があるか否かがモノを言うのでしょう。2位以下の転落・滑落、転倒も体力によるところが大きいです。遭難しないためには、もちろん知識や経験も重要ですが、「まず体力ありき」が真実ではないでしょうか。

大学の登山部だった方の話を聞くと、とにかく厳しい山行を経験されています。体力というしっかりとした土台があって、そこに知識や経験が乗っかっているのだと思います。

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山別遭難者数

次に2016年の主な百名山の山別の遭難者数をまとめてみました。死亡、重軽傷、救助要請ののち無事救出された回数を山ごとにカウントしました。どこまでをその山とカウントするかは微妙なところがありますが、僕の独断と偏見で仕分けました。悪しからず。

山系山名死亡重軽傷無事救出
北アルプス白馬岳21711
北アルプス五竜岳11
北アルプス鹿島槍ヶ岳43
北アルプス剱岳31
北アルプス立山381
北アルプス薬師岳1
北アルプス鷲羽岳1
北アルプス水晶岳
北アルプス槍ヶ岳106
北アルプス奥穂高193810
北アルプス笠ヶ岳22
北アルプス焼岳21
中央アルプス木曽駒ヶ岳4102
中央アルプス空木岳15
南アルプス北岳17
南アルプス間ノ岳1
南アルプス塩見岳21
南アルプス鳳凰山25
南アルプス甲斐駒ヶ岳18
南アルプス仙丈ヶ岳11
南アルプス荒川岳1
南アルプス赤石岳21
南アルプス聖岳
南アルプス光岳
八ヶ岳八ヶ岳6183
富士山富士山102523

奥穂高周辺が圧倒的に多いです。しかし意外にも槍ヶ岳は少ない結果でした。北アルプスでも槍ヶ岳と奥穂高は1,2を争う人気の山で体力度も危険度も似たようなもんです。ただ、奥穂高周辺は、奥穂高~西穂高、奥穂高~北穂高などの北ア有数の危険エリアを抱えているのも理由の一つです。
奥穂高
槍ヶ岳にも北鎌尾根がありますが、こちらは完全にバリエーションルートのため一般登山者が皆無なため遭難事態が少ないですが、奥穂高~西穂高、奥穂高~北穂高は一般人も歩けてしまうためレベルが伴わない登山者の遭難が多いと推測します。

奥穂高周辺は危険エリアが多いことが遭難者が多いと述べました。が、この表からは分かりませんが、奥穂高に登る最も一般的ルートであるザイテングラード周辺だけで死亡4人、重軽傷7人、無事救出1人も発生しています。

一般ルートにおいて比較するなら、槍ヶ岳の槍の穂先は危険な場所ですが身軽で手足を使って登るため意外と大丈夫です。詳細は以下をご確認下さい。


実際、2016年では槍の穂先での遭難はありません。奥穂高はザイテングラードから山頂まで槍の穂先ほど危険ではありませんが、それが故に手を使わず登れるところで転倒や転落してしまうのでは無いかと思います。

僕の過去の経験から思う最も危険な場所とは、手を使わなくても何とか歩ける場所です。自分の疲労に敏感になりましょう。そしてサボらず手をつくようにしましょう。

まとめ

最後にまとめです。遭難の実態について、ポイントを箇条書きにしました。

  • 登山人口は減っているのに遭難者は増えた。
  • 70代以上を中心とした高齢者の遭難の増加が、登山者総数は減っても遭難者数が増加している原因。
  • 遭難で最も多いのは道迷いで、それも体力のなさが起因していると思われる。体力が大事。
  • もっとも危険エリアとは手を使わなくても何とか歩ける場所。

今回は触れませんでしたが、万が一のリスクを考えて、山岳保険への加入も必須です。jROという保険はオススメです。


今回の記事を書くために参考にした本です。読んでみるとなかなか面白いです。
登山白書2017 ヤマケイ登山総合研究所編

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