料理のクオリティが素材と味付けで決まるように、写真でも同じことが言えます。写真における素材とは生データ、味付けとは加工(レタッチ)のことです。
今回はそのうちの加工についてのお話です。世に写真を加工できるソフトはあまたありますが、ここではニコンの画像現像に特化したフリーソフトCapture NX-Dを使って写真をより印象的に見せるための機能を紹介したいと思います。
Catpure NX-Dとは
Capture NX-Dとはニコンが提供している画像現像ソフトで、画像のレタッチやトリミング、圧縮そしてRAW現像といった画像処理に関わる機能を一通り揃えた無料のソフトです。
今、とても重要なことをサラリと書きました。無料。そう、無料なんです。巷にはライトルームやフォトショップと言った高性能なソフトもありますが、それなりにお金がかかります。
特にサブスクリプションで永久的にお金を支払い続けなければならいこれらソフトに比べると、画像処理のはじめの第一歩として使用するにも最適のソフトだと思います。
画像処理の基本を学ぶ意味でもニコンユーザーはダウンロードしていて損は無いと思います。
PhotoShopのようにレイヤーを構成したり、領域指定して画像の一部のみ画像処理をほどこすことはできず機能は限られていますが、それ故にシンプルで操作し易いソフトと言えます。何よりカメラメーカ自身が作ったソフトですのでその品質には信頼をおいてよいのではないでしょうか。
2018年11月のバージョンアップで画像の一部のみ処理を施すことができるようになりました!
Capture NX-Dのダウンロード方法
Capture NX-DはニコンのHPからダウンロードできます。
サイトにアクセスすると、以下のダウンロードのページが表示されます。「View NX-i & Capture NX-D」と「Capture NX-D」のいずれかを選択してダウンロードします。ちなみに、View NX-iとは主に画像データの管理に主眼が置かれたソフトです。

動作環境は以下の通り。ネットで「動作が遅い」という感想も見受けられますが、最低でも以下のスペックを満たす必要があります。

ちなみに、ソフトをインストールすると、Readmeというwordファイルも保存されています。特に読まなくても使えますが、一つだけ気になることが書いていましたので抜粋しておきます。
Capture NX-Dの基本的な使い方
ソフトをダウンロードして画像を開くと、以下のような画面になります。

Capture NX-Dの機能のうち、使用頻度が高いものをざっくり3種類「画像の編集」「補助機能」「画像の出力」に分類してみました。
- 画像の編集(エディット)
- 補助機能
- 画像の出力
まず、一つ目が水色の画像の編集機能。エディットも呼ばれます。画像の色調やコントラスト、シャープネスやレンズ補正といった様々な処理を行うことができます。Capture NX-Dのソフトのキモの部分です。
最も重要でCapture NX-Dの存在意義でもある画像の編集機能については、この記事だけでご紹介するのは不可能なので、このページの下部にリンクを貼っています。知りたい内容の記事をご確認下さいな。
次に、黄色の補助機能。画像処理そのものには関係ありませんが、編集前後の比較をしやすくするために2画面にしたり、ヒストグラムや写真の撮影条件の表示といった、補助的な機能です。
三つ目が画像の出力。編集を終えた写真の品質やサイズを決定して出力するためのものです。
補助機能
では二つ目の補助機能についてのご紹介です。先ほども書いたとおり、補助機能は画像処理そのものは行いませんが、処理を手助けする知っておくと便利な機能がありますのでいくつか主だったものをご紹介します。
ヒストグラム(デジタル値の分布を確認する)
知っておいた方が良い、というより知っておくべきなのがヒストグラム。
ヒストグラムとは横軸にRGBそれぞれのピクセルごとのデジタル値(0~255)、縦軸にその数を示したグラフで、RGBの色分布を感覚的に把握することができます。
RGBそれぞれの色に対応して、Rなら赤色でグラフが表現され、3色が重なる箇所は白で表現されます。
このグラフから読み取れることはいろいろありますが、確実に押さえておくべき点は1つだけ。デジタル値が0,255のときのピクセルの有無です。
例えば上のヒストグラムだと、デジタル値が0のときのRGBはありませんが、255のときのBの数が非常に多く含んでいることがわかります。これはBのデジタル値が255で飽和してしまい、Bの階調が飛んでいることを示しています。
つまりこの画像は空の青の部分のデータが欠落してしまっています。このようなデータの欠落は明確な意図がある場合を除いて避けるべきです。
様々なパラメータを変更するとヒストグラムもそれに追従して変化しますので、それを確認しながら、データの欠損が発生しないよう色調調整する必要があります。そのためにもヒストグラムは常に表示させておくのが良いでしょう。
クロップ(画像のトリミング)
クロップとは画像のトリミングのことです。クロップを選択すると左上の小ウインドウが開くので、ここでトリミングする縦横比を設定します。その後、画像上でドラッグすると設定した縦横比で画像が選択され、トリミングすることができます。
フルサイズ機のカメラだとカメラ本体にクロップ機能が搭載されています。ただの画像のトリミング機能ですが、とても重要なポイントがあります。それは画像を拡大できることです。
通常、パソコン画面上で表示している写真は縮小して表示しています。撮影時に最高画質かつファイルサイズを最大で撮影していると、かなり縮小されています。
つまり拡大できる余力を残している状態で、トリミングして拡大しても画質劣化しないということです。
(正確には無いように見える、ですが)
具体的にどの程度までトリミング可能かはファイルサイズや出力方法によって異なるため一概に言えませが、
例えば、フルサイズ機のD750でクロップ機能を使うと焦点距離が1.5倍相当で撮影でき、使用する画素数は2500万がそから1000万画素程度になりますが、画面で見る分にはまったく問題ありません。おそらくA4出力でも問題ないでしょう。
グリッド
続いてグリッドの表示です。グリッドとは格子線を表示させる機能で、メニューから「画像」→「グリッドの表示」を選択します。
すると、画面上に等間隔の格子線が表示されます。
グリッドを表示させる目的は水平垂直の確認のためです。撮影した写真を後で見返すと、水平が斜めになっていたということはよくあります。
正しく水平が出ているかの確認は水平を補正するためのガイドとして重宝します。

ちなみに、画像の傾きを補正するには、「傾き補正」を選択します。画面上で任意の箇所をプロットし、そのままドラックすると直線が描画されます。この直線が補正後の水平線(または垂直線)になります。
文章だと分かりづらいので実際にやってみて下さい。

白飛び・黒潰れの表示
補助機能として重要なのが、白飛びと黒潰れの表示です。ヒストグラムによって、白飛び、黒潰れの有無を確認できると書きましたが、この表示きのうによって具体的にどこに生じているかを確認することができます。
「画像」→「白飛びの表示」を選択すると、以下のような暗転した画像になります。少し分かりづらいですが、黒でない箇所がRGBいずれかの色が飛んでいる(=255になっている)ことを示しています。
具体的にはこんな感じ。
赤色 = Rが255
緑色 = Gが255
青色 = Bが255
黄色 = RとGが255

上記の画像から、線路脇のポールが白いのでRGBすべてが色飛びしており、空が青色になっているのでBが色飛びしていることが分かります。
黒潰れの場合は逆にベース画像が白くなり、潰れている箇所に色が付きます。
exif情報
続いてファイル情報です。一般的にはexif情報と呼ばれ、画像に関する様々な情報を確認することができます。「ウインドウメニュー」→「ファイル/撮影情報」を選択すると、左のウインドウに表示されます。
色んな設定で撮影した写真が混在しているときに便利。

Capture NX-Dで確認できるexif情報は48項目にものぼります。Windowの標準の画像ビューワーでも情報を確認することができますが、ここまで詳しくありません。

画像の出力
次に画像の出力について。これ自体は多くの機能がある訳ではありませんが、必ず使用する機能ですし、知っておくと便利です。
ファイル変換は画像の編集を終えて出力するときに使用します。ファイル形式はJPEGかTIFFを選択し、画質、出力解像度、画像サイズを決定して出力します。
Captrue NX-Dが便利なのは、画質や画像サイズの設定を複数の画像に対して一括で行える点です。対象の画像を複数枚選択して、Capture NX-Dで開きます。(Capture NX-Dのアイコンにドラック&ドロップでも可)
そして、以下の画面でファイル形式、画質、画像サイズを設定して出力するとその設定がすべての画像に反映されます。
画質や画像サイズを変更する目的でも有用な機能なので覚えておいてくださいな。
エディット
エディットが画像加工機能のことでこれを駆使して画像を編集していきます。このソフトはニコンのカメラで撮影された画像を前提に作られているので、ニコンのRAW形式のファイル(NEF)で機能のすべてを活用することができますが、JPG等のファイル形式でも十分使えるソフトです。エディットについては以下のページに詳細な操作方法を紹介しています。
エディットについて、ニコン製のRAW形式とJPGとで使える機能を表にしてみました。「△」は機能の一部が使用できず、「×」は完全に使用できないことを表しています。
機能 | NEF | JPG |
---|---|---|
露出補正 | 〇 | × |
ホワイトバランス | 〇 | × |
ピクチャーコントロール | 〇 | × |
トーン | 〇 | 〇 |
トーン(ディテール) | 〇 | 〇 |
ノイズリダクション | 〇 | △ |
カメラとレンズの補正 | 〇 | △ |
LCHエディター | 〇 | 〇 |
傾き補正とアオリ効果 | 〇 | 〇 |
アンシャープマスク | 〇 | △ |
レベルとトーンカーブ | 〇 | 〇 |
レタッチ | 〇 | 〇 |
Capture NX-Dを用いた加工の実例
Capture NX-Dを用いて行った加工の実例は以下のページで紹介しています。
参考の書籍
Capture NX-Dについて書かれた本はあまりないのですが、基本的な操作はこちらに参考になります。
カメラのしくみについて書かれた本って意外と少ないですが、この「カメラとレンズのしくみがわかる光学入門」はイラストがたくさんあって分かりやすいです。
が、かわいいイラストに騙されてはいけません。書いていることはけっこう専門的です。
Capture NX-Dで物足りなくなった場合はPhotoshopがおすすめ
Capture NX-Dは無料の割には機能が充実していて使いやすいソフトです。ニコンユーザーにとってはインストールしておいて損はありません。
ですが、Capture NX-Dも万能ではありません。機能を組み合わせることで様々なレタッチが可能ですが、Capture NX-Dでもできないこと、苦手なことがあります。
僕がこれまでCapture NX-Dを使っていて「この機能があれば」と感じたのは主に以下の3つです。
②.ディテールの強調処理が充実していない
③.フィルターやレイヤー機能がない
例えば「②.ディテールの強調処理が充実してない」点について。
これから以下の雪山の写真のディテールを強調するようレタッチしたいと思います。
ちなみに、ディテールとは細部のことで、「ディテールを強調とは細部のメリハリを強調する」という意味です。

以下の画像の左がCapture NX-Dでディテールを強調した画像、右がPhotoshopで処理した画像です。
■(左)Capture NX-Dと(右)Photoshopの比較
いかがでしょうか?Photoshopで処理した画像の方が細部がメリハリがある写真に仕上がっていますね。これがディテールを強調する機能の差です。
こういった、「さらにつっこんだレタッチ」求めていくと、Catpure NX-Dでは物足りなくなってしまいます。
他にもCapture NX-Dにはできず、Photoshopではできることについて以下の記事でまとめています。よろしければご参考に~。
もし、上に書いた①②③の機能を求めるならPhotoshopを選ぶことをおすすめします。
Photoshopは月額980円かかりますが、Lightroomも使えてお得!試しに使ってみてはいかがでしょうか。
Photoshopによって表現できる幅は飛躍的に広がります。「写したままから感じたままへ。」のコピーはダテではありません。
ちなみに、amazon等からでも購入できますが、月1980円なので上の公式HPからの方が圧倒的に安価です。