カメラを始めてまず戸惑うのがイメージセンサーサイズの規格がたくさんあることです。代表的なものでフルサイズ、APS-C、フォーサーズ、主にiPhoneで使用されている1/3型などがあり、これらもメーカごと、機種ごとに微妙にサイズが異なります。
センサーサイズが異なると、焦点距離、F値、被写体距離などの設定値が同じでも画角、被写界深度(ボケ)、画質が変わってくるため、できあがる写真もまったく異なってきます。
その中でも今回はセンサーサイズと被写界深度(ボケ)の関係性についてまとめてみました。
イメージセンサのサイズ
代表的なイメージセンサであるフルサイズ、APS-C、フォーサーズ、1/3型のサイズを図で表すと以下のようになります。面積比で言うと、ざっくりと1/3型の50倍、フォーサーズの4倍、APS-Cの2倍がフルサイズの大きさになります。
センサーサイズが大きい方が良くボケる?
センサーサイズが大きい方が良くボケると言われますが、これは正しいのでしょうか?感覚的にはフルサイズの方が良くボケると認識している方が多いと思いますが、厳密に言うとそれは間違いです。
間違いの理由を計算で確認してみましょう。まず被写界深度は以下の計算式で求めることができます。
$$前方被写界深度 = \frac{許容錯乱円 ✕ F値 ✕ 被写体距離^2 }{焦点距離^2 + 許容錯乱円 ✕ F値 ✕ 被写体距離}$$$$後方被写界深度 = \frac{許容錯乱円 ✕ F値 ✕ 被写体距離^2 }{焦点距離^2 - 許容錯乱円 ✕ F値 ✕ 被写体距離}$$
$$被写界深度 = 前方被写界深度 + 後方被写界深度$$
この式の中でセンサーサイズに依存する値は許容錯乱円です。フルサイズであれば0.03、APS-Cであれば0.02と言われていますので、これらの値を以下の「ボケを操る!被写界深度計算表」のツールに代入、焦点距離を例えば35mmに設定して計算してみると、フルサイズ(許容錯乱円0.03)で焦点距離35mmのとき、F値1.4、被写体距離0.5m時の被写界深度は1.7cmとなります。

対して、APS-C(許容錯乱円0.02)で焦点距離35mmのとき、F値1.4、被写体距離0.5m時の被写界深度は1.1cmとなり、APS-Cの方が、被写界深度が狭い、つまりボケやすいということになります。

このことから、「センサーサイズが大きい方がボケやすい」は誤りになります。しかし、一方で経験的に明らかにフルサイズの方がボケやすいという感覚がある。なぜ計算と感覚とにこのような差異が現れるのでしょうか?
原因は計算と感覚それぞれの条件が異なることにあります。フルサイズとAPS-Cのボケやすさを感覚的に比較するとき、同じ画角になるよう焦点距離を変えて比較しますが、上記の計算では焦点距離を同じ値で比較したために結果に差異が生じたのです。
APS-Cがフルサイズと同じ画角を得るためには、フルサイズよりも焦点距離を短くする必要があります。例えば、画角90度のときの焦点距離はフルサイズの場合は18mm、APS-Cは11.7mmです。
これらの値を以下の計算ツールに代入してみると、フルサイズ(許容錯乱円0.03)で焦点距離が18mmのとき、F値1.4、被写体距離0.5m時の被写界深度は6.5cmとなります。

対して、APS-C(許容錯乱円0.02)で焦点距離が11.7mmのとき、F値1.4、被写体距離0.5m時の被写界深度は10.3cmとなり、フルサイズの方が、被写界深度が狭い、つまりボケやすいということになります。

以上より、「APS-Cよりもフルサイズの方がボケやすい」とは、厳密に言うと「APS-Cとフルサイズとで同じ画角になるよう焦点距離を設定した場合、APS-Cよりもフルサイズの方がボケやすい」となります。
次回(↓)はイメージセンサーサイズと被写界深度(ボケ)の関係性を計算ツールを用いて確認したいと思います。
参考:カメラのしくみについての書籍
カメラのしくみについて書かれた本って意外と少ないですが、この「カメラとレンズのしくみがわかる光学入門」はイラストがたくさんあって分かりやすいです。
が、かわいいイラストに騙されてはいけません。書いていることはけっこう専門的です。