フラッシュがあると何かと便利ですね。暗所で明るく撮影できるだけでなく、被写体に当たる光の量や向きをコントロールすることができ、表現の幅が飛躍的に広がります。
シャッターの瞬間に光るという単純な機能ですが、使いこなす上で知っておくべきことが意外とあります。今回は使いこなす上でのフラッシュにまつわる基本的なお話です。
ガイドナンバーを計算で簡単に求めることができるツールを作成しました。さっさと計算したい方は文末へ移動下さい。
フラッシュ(スピードライト)とは
フラッシュはスピードライトとも呼ばれます(以降はスピードライトと表記)。ポイントは要は光がちゃんと被写体に届くか、という一言に集約されますが、それを判断できるためにはスピードライトの仕組みを理解する必要があります。
適正な露出の画像を得るためには大きく二つの要素があます。一つはカメラに入射する光源の光量、もう一つはその光量を受光する感度です。入射光量が少なくても受光感度が高ければ露出は適正にできますし(限界はありますが)、光量が多いなら感度を下げればよい。そのバランスによって適正露出が決まります。
通常の撮影では受光側の設定だけ意識すれば良かったのですがフラッシュ撮影の場合、光量も制御しなければいけいのがややこしいところです。光源と受光に関連する諸条件を絵に表してみました。
カメラとスピードライトの光量に関係する諸条件
光源
最も重要な要素です。光源次第ではすべての設定が根本から変わってきます。
f値(絞り)
絞りを開いた方がより多くの光を取り込めるため明るく撮影できます。
ISO感度
感度を上げた方が同じ光量でも明るく撮影できます。
ガイドナンバー
ガイドナンバーとは、スピードライトの光量を表す値です。これが大きい方がよりたくさんの光を発することができることを意味し、機種選定の際には指標とすべき値になります。
例えば、ニコンの上位モデルであるスピードライトSB-5000のガイドナンバーは34.5となっています。なお、後から述べますがこのガイドナンバーの数値の扱いは注意が必要です。
発光量
スピードライトの光量はガイドナンバーで決まりますが、段階的に光量(減光)を変化させることができます。別の言い方で、パワーレシオと呼ぶこともあります。
照射角
発する光量が一定なら照らす領域を狭くした方が、より明るく照らすことができます。スピードライトはカメラの画角(焦点距離)に同調して照らす領域を制御しています。
被写体距離
当然、被写体が近い方が明るく撮影できます。
スピードライトと各種パラメータを数式で表現すると
以上のパラメータをコントロールして適正な露出を得ることになるのですが、これらパラメータはどのような関係性になっているのか。それは数式で表現することができます。
被写体の光が届く有効な距離を主語にして式を書くと
という簡単な式で表されます。ですが、前に述べたように、ISO感度、発光量、照射角によっても適切な光量は変わってきます。これらを考慮すると計算式は以下のようになります。
発光量と照射角を【】書きしているのは、これらの初期値を用いるなら考慮しなくても良いという意味です。
発光量とはどの程度の割合で出力するかという値です。例えばニコンであれば最大発光量を1/1として、1/2,1/4と累乗分の1で低下していき、1/256まで設定することができます。次に照射角ですが、これがガイドナンバーと絡んでややこしい。
すべてのスピードライトにはガイドナンバーが決められています。そして、照射角によって光量は異なるとも言いました。それではスピードライトに付されたガイドナンバーとは、どの照射角のときの値なのでしょうか?
先ほどのニコンのSB-5000のガイドナンバーは34.5とお伝えしましたが、ニコンは照射角が35mmの時の光量でガイドナンバーを表記しています。

対して、キヤノンのスピードライト600EX II-RTのガイドナンバーは60ですが、照射角200mmのときの値です。そう。メーカー、機種によって基準の照射角が異なるのです。何ということでしょう。

似た価格帯のニコンとキヤノンのガイドナンバーを比べるとキヤノンの方が値が大きいので、より明るいスピードライトのように思えます。が、ニコンと照射角を揃えてみるとそれほど差はありません。ニコンSB-5000とキヤノン600EX II-RTの照射角に対するガイドナンバーは以下の通りです。
照射角(mm) | ニコンSB-5000 | キヤノン600EX II-RT |
---|---|---|
24 | 27 | 27 |
28 | 29.5 | 28 |
35 | 34.5 | 34 |
50 | 40.5 | 39 |
70 | 45 | 46 |
85 | 47 | |
105 | 50 | 54 |
135 | 53 | 57 |
180 | 54.5 | |
200 | 55 | 60 |
よってスピードライトを選ぶときはガイドナンバーがどの照射角を基準にして表記されているかを確認しておく必要があります。照射角とガイドナンバーの対応は取扱説明書に記載されています。
ガイドナンバー計算ツール
以上を踏まえて、ガイドナンバーにまつわる計算ツールを作成しました。ガイドナンバー入力欄に「基準のGNを入力」と記載していますが、これは各スピードライトの使用表に記載されている基準としているガイドナンバーのことです。例えばニコンのSB-5000の場合は34.5を入力します。